Ⅰ 看護図書館

1.看護図書館

看護図書館として、看護職養成機関である看護大学・看護学校の図書館はもとより、看護職対象 に継続教育を実施する看護職能団体や、看護職が利用する病院図書室も視野に入れています。

「看護図書館マニュアル」では日本看護図書館協会(以下看図協)の会員である看護領域の資料 を扱う図書館や図書室を想定しています。また会員外でも看護図書館に携わる方、図書担当がい ない看護図書館にも参考となるように考慮しました。本稿は図書室も含め、図書館と表記します。 近年公共図書館が、医療関係資料を収集提供する事も増えており、資料の特性や実務は参考に していただければ幸いですが、公共図書館は対象図書館とはしていません。 

看護図書館の歩みは「日本の図書館の歩み」をご参照ください。

今田敬子.”看護図書館”日本の図書館の歩み 1993-2017.日本図書館協会, 2021.91-93.

2.看護司書

1)心構え・規範 

看護司書という表現は周知されていませんが、看護図書館に携わる専門職として、あえて「看護 司書」と名乗っていきたいと思います。 

司書は、資格名称で、図書館職員全てが司書ではありません。公共図書館等で専門職員として 配置される場合の他、専門図書館や学校図書館でも司書資格が求められる場合もあります。司 書資格は講習や、大学で履修して取得できます。司書資格があっても、専任の正規職員として認 められない場合もあり、司書が配置されている看護図書館は未だ多くありません。兼務でも、司書 として職分が認められている場合は、司書の存在が看護専門教育に有用である事を、実務を通し て、親機関管理者、教員、学生に具体的に認識されるように心がける事が重要です。 専門職の司書と周囲から遇されなくても、自身は専門職であり、看護教育に資する役割があると 信じて、真摯に取り組みたいものです。 

看護大学は、当初設置された看護単科大学は減少し、医療系や文化系を含む総合大学に統合さ れる場合や、その一部として学部や学科が設置される事も増えています。その場合は看護分野 以外の資料も対象となりますが、本マニュアルでは看護領域に限定した専門司書として記述を行 います。一般的な司書業務は、司書教育の教材等が参考になります。

2)能力向上・スキルアップ・自己研鑽 

看護司書としての能力向上には、看図協の研修会や、機関誌「看護と情報」が最も有効です。 研究会・研修会は看図協ホームページで紹介され、「看護と情報」もWeb公開されています。

図書館の質向上には研修が有効である旨を親機関に説明し、理解を得て参加する事が望ましい ですが、親機関の理解が得られない場合でも、自身の時間や経費の自己負担で、研鑽を積み、 専門知識の向上を目指す事が、自身の専門性を周囲に理解してもらう為には必要です。 医療系図書館知識の取得には、日本医学図書館協会の研修や機関誌なども参考になります。 図書館関連企業や、図書館関係者が集まる「図書館総合展」でも、多くの情報が得られます。所 属図書館が利用しているソフトや機器の提供業者に、積極的に情報提供を求め、技術の確認を 行う事もスキルアップにつながります。 2 / 2 3)資格と評価 司書資格の取得要件は、国が決めていますが、他にも、図書館員の専門性を評価するシステム があります。看護図書館にとって身近な評価として、日本医学図書館協会(JMLA)に、「ヘルスサ イエンス情報専門員」という認定資格制度があります。この認定資格は、JMLA の会員でなくても 申請できますし、看図協での研修参加、研究発表、論文執筆などの活動も、評価対象です。 専門職大学院は、専門職種対象の教育機関で、関連する学位が取得でき、法科大学院がよく知 られています。看護学校教員には、特に学位が必須ではありませんでしたが、看護系大学の増加 に伴い、大学教員の養成も視野に看護系大学院を設置、修士号や博士号の取得に注目が向け られました。図書館情報学系の専門職大学院は多くありません。司書課程を開講している大学な どを探してみてください。 3.日本看護図書館協会 看護教育は多様な養成課程があり、従来その大半は看護学校で行われ、看護学校図書室の管 理運営は、教員や事務職が兼務で対応してきました。看護教育機関として看護系4年制大学の設 置が多くなってきた 1991 年司書を配置する看護大学図書館が増加する事を予測し、看護図書館 の質向上と看護司書の研鑽と人的ネットワークの形成を目的に看護図書館研究会設立を有志が 呼びかけ、個人会員と団体会員からなる「看護図書館協議会(略称看図協)」を 1991 年 12 月創設 し、その後組織改正と共に 2002 年度より「日本看護図書館協会(略称看図協)」と改称しました。 看図協は、設立当初より、会員実態調査、研究会開催、機関誌「看護と情報」発行」や、加盟館ハ ンドブックで相互貸借情報を共有し、重複雑誌交換などの活動を行ってきました。 看図協の入会方法や活動内容の詳細は、看図協のホームページで確認してください。 看護教育機関全体に占める組織率は高くありませんが、看護図書館の活動の主導的な役割を担 っています。医療関係機関図書館のネットワークなどは、後述のネットワークをご参照ください。